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黒い髪の青年は、果てしなく広がる空と、色を失ったような草原を見て、それから頷いた。
「それが、お前の決めたことなら、それでいいんじゃない?」
それは至って平然とした声で、いつものように軽く返答するというような、何てことのないような口調だ。
青年は、そこに立っているはずの誰かに、視線を合わせた。
そして、もう一言付け加える。
「散々振り回されてきたんだ。今更どうってことないよ。」
彼以外誰もいない空間で、返ってくるはずのない返答を、青年は確かに聞いたのだろう。
「ああ。それじゃあ、さよならだ。縁があればまた会えるだろうね。」
色が失われていく中で、青年は金色の瞳を天に向け、零すように言った。
「さよなら。ありがとう。」
それから何が起きたかなんて青年はきっと覚えていないし、気が付いたときにはこの事象すら忘れているのだろう。
しかし、そんなことはあまりに些細な問題で、重要なのは、青年はそれから幸せに生を全うしたということなのだ。
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